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株を買って、植え替えようと用土を探し始めると、選択肢が一気に増える。「塊根植物の土」と書かれた袋もあれば、赤玉土、日向土、軽石、パミス、ゼオライトと、素材を別々に買って混ぜる人もいる。配合の比率も、紹介する人の数だけあるように見える。
迷う点は、おおむね3つに絞れる。市販の専用土で足りるのか、自分で混ぜるなら素材ごとに何を受け持たせるのか、置き場所と水やりの頻度に合わせて比率をどう動かすのか。
この記事では、結論を表にしたうえで、素材別の役割、置き場所と水やり別の配合例3つ、市販用土の見方、微塵抜きと植え替えの手順、よくある失敗の順に整理した。素材の性質は、農研機構の資料やホームセンター・専門サイトの公開情報で確かめたものだけを載せ、出典は近くに書いた。配合の比率に正解はなく、ここで挙げる数字はすべて「一例」だ。
結論 — 市販の専用土で足りる人、配合したほうがよい人
先に、どちらが向くかを表にする。
| 市販の専用土で足りる人 | 自分で配合したほうがよい人 | |
|---|---|---|
| 鉢の数 | 1〜数鉢 | 鉢が多く、用土をまとめて使う |
| 置き場所 | 1か所で、環境がほぼ同じ | 屋外と室内など、乾き方の違う場所に分かれている |
| 水やり | 生育期に乾いたらたっぷり、という基本どおり | 頻度が多い/少ないなど、自分の癖がはっきりしている |
| 求めるもの | 手間を減らしたい、まず1回植え替えたい | 乾き方を株ごとに調整したい |
| 注意点 | 原材料と粒の大きさは確認する | 素材を別々に買うので、余りと置き場所が出る |
最初の植え替えは、市販の塊根・多肉向けの土を、微塵を抜いて使うところから始めて構わない。乾き方を見てから、足りない性質の素材を足していく順の方が、原因が分かりやすい。
どちらを選んでも、目指す状態は同じだ。グラキリスの育て方入門で書いたとおり、塊根植物の用土は保水よりも排水性・通気性を優先し、「水やり後、数日で乾く」状態を基準にする。グラキリスはその具体例で、本記事は素材と比率の話をもう一段細かくしたものだ。
素材別の役割 — 何を受け持たせるか
役割表
主な素材の性質を並べる。性質の欄は、公開資料で確かめられた項目だけを書き、確かめられなかった欄は「—」にした。
| 素材 | 主な役割 | 保水 | 排水・通気 | 崩れやすさ | pHの傾向 |
|---|---|---|---|---|---|
| 赤玉土 | 骨格。保水と排水の調整 | ○ | ○ | 崩れて微塵になる。硬質品が勧められる | 6.0〜6.5 |
| 鹿沼土 | 排水・通気の補助 | △ | ○ | 品質にばらつきがあり、硬質を選ぶよう勧める資料がある | 酸性寄り(5.5〜6.0) |
| 日向土 | 排水・通気の強化 | ×〜○(資料で差) | ○ | 崩れにくいとされる | 6.5〜7.0 |
| 軽石・パミス | 排水・通気の主軸 | × | ○(きわめて良好とする資料あり) | — | 6.5〜7.0 |
| ゼオライト | 保肥力の改善 | 高い | — | — | 塩基に富む |
| くん炭 | 透水性の改善、pH調整 | — | ○ | — | 高い(アルカリ寄り) |
| ヤシガラ(ココチップ等) | 保水の補助 | ○ | ○ | 有機質で年々分解・目減りする | 5〜6程度 |
出典: 用土の性質一覧(コメリ「土を作る」)/ 谷山一郎「肥料・煙害展示室における用土標本」(農業環境技術研究所、インベントリー第8号、2010年)/ 塊根植物の用土・配合レシピ完全ガイド(CAUDEX BASE)/ ヤシガラ(ココピート)とは(CAUDEX BASE)。○×はコメリの一覧表の記号に合わせた。pHは主にコメリの一覧による。数値は資料ごとに幅がある。
赤玉土 — 骨格になるが、崩れる
赤玉土は、赤土を粒の大きさでふるい分けた黄褐色の土で、赤土より通気性が良く、鉢物に使われる。農業環境技術研究所の用土標本の解説には、崩れて粉末になった土(みじん)は通気性や排水性を悪くするので、ふるいで取り除く、とある(出典: 谷山、インベントリー第8号)。

塊根植物の配合でよく「硬質」の赤玉土が指定されるのは、この崩れを遅らせるためだ。CAUDEX BASEも、通常の赤玉土は崩れやすく、崩れると通気性が失われるため、塊根植物には硬質タイプが向くとしている。ただし硬質でも崩れないわけではない、という前提で使う。
鹿沼土 — 酸性寄りの補助役
鹿沼土は栃木県鹿沼地方で産出する黄色の軽石質の粒で、酸性を示し、通気性・排水性に優れる。挿し木や、酸性を好むツツジ科の植物に使われる(出典: 谷山、インベントリー第8号)。pHはコメリの一覧で5.5〜6.0、CAUDEX BASEでは4.5〜6.0程度とされ、資料によって幅がある。塊根植物の配合では主役というより補助で、入れるなら一部にとどめる使い方が多い。
日向土・軽石・パミス — 排水と通気の柱
軽石は、火山から噴出した多孔質の礫で、通気性がきわめて良好とされる(出典: 谷山、インベントリー第8号)。CAUDEX BASEは軽石を「排水・通気の主軸」と位置づけ、水が抜けた後も空気を保持するとしている。コメリの一覧では、軽石・日向土・パミスは同じ行にまとめられ、pH6.5〜7.0、通気性○、保水性・保肥性×とされている。

日向土は宮崎県産の軽石系の用土で、CAUDEX BASEでは崩れにくく、過湿対策に向くとされる。農業環境技術研究所の解説には、近い名称の「日向砂」が、宮崎県都城地方に産出する霧島火山群由来の火山性砂礫として載っており、多孔質で通気性・保水性は良い、と書かれている(出典: 谷山、インベントリー第8号)。資料によって保水の評価が分かれるので、役割表では幅を持たせた。
ゼオライト・くん炭 — 少量で性質を足す
ゼオライトは、農林水産省の土壌改良資材品質表示基準で、主たる効果を「土壌の保肥力の改善」とする資材に定められており、陽イオン交換容量(meq/100g)の表示が求められている(出典: 農林水産省「土壌改良資材品質表示基準」)。袋にこの数値があれば、製品どうしを比べる手がかりになる。農業環境技術研究所の解説でも、保水性・保肥力が高く、塩基に富むとされる。
くん炭(もみがらを炭化させたもの)は高pHで、透水性や微生物性の改善、pH調整のために混ぜられる(出典: 谷山、インベントリー第8号)。マイナビ農業の記事(農研機構の研究者が監修)では、まきすぎると土壌がアルカリ性に傾きすぎ、土が軽くなって植物が倒れることもある、と注意している。どちらも「少量を足す」素材で、骨格にはしない。
ヤシガラ・ココチップ — 有機質であることを前提に
ヤシガラは、ココナッツの外皮から作る有機質の素材だ。CAUDEX BASEは、軽石や日向土の代わりに常用することは勧めておらず、理由として有機質で経年で分解・目減りすること、無処理品は塩分を含むことがあり使用前に水でよく洗うこと、コバエなどが発生しやすい傾向があることを挙げている(出典: ヤシガラ(ココピート)とは、CAUDEX BASE)。室内で使う場合は、とくに最後の点を考えておきたい。
配合の考え方 — 置き場所と水やり頻度で3パターン
軸は「乾くまでの日数」
配合を決める軸は、素材の名前ではなく、その場所でどれだけの日数で乾くかだ。日当たりと風のある屋外では乾きが早く、室内や風の弱い場所では遅くなる。水やりの頻度が多い人ほど、排水寄りの配合の方が過湿になりにくい。
草花の鉢植えの基本配合として、コメリは「赤玉土(小粒)6〜7割:腐葉土3〜4割」を挙げている(出典: コメリ「土を作る」)。これに対して、塊根植物向けとして紹介される配合例は、腐葉土などの有機質を入れず、無機質の粒だけで組むものが多い(例: CAUDEX BASE)。
3つの配合例
| パターン | 向く環境 | 配合の一例(容量比) | ねらい |
|---|---|---|---|
| A 標準 | 屋外の日なた。生育期に乾いたらたっぷり与える | 軽石4:硬質赤玉土4:日向土2 | 保水と排水の中間 |
| B 乾きにくい環境向け | 室内、風が弱い、水やりが多め、現地株 | 軽石5:日向土3:硬質赤玉土2 | 排水寄り。乾くまでの日数を縮める |
| C 乾きやすい環境向け | 屋外の小さな鉢、真夏にすぐ乾く | 硬質赤玉土5:日向土3:軽石2 | 赤玉土を増やし、やや保水寄り |
AとBは、CAUDEX BASEが「標準ブレンド」「過湿対策ブレンド」として紹介している比率だ。Cは、Aの赤玉土と軽石の割合を入れ替えた、本記事での考え方の例で、出典のある配合ではない。
3つとも出発点で、決まりではない。同じ配合でも、鉢の素材や大きさで乾き方は変わる。素焼き鉢はプラスチック鉢より乾きやすく、株に対して大きすぎる鉢は乾きにくい。用土と鉢は組み合わせで決まるので、配合だけで調整しきれないときは、鉢の側も見直す。
動かし方は1種類ずつ
最初はAかBで植え、乾くまでの日数を数える。乾きが遅ければ軽石・日向土を増やし、早すぎれば赤玉土を増やす。一度に動かすのは1種類、割合で1割程度にとどめると、変化の原因が追いやすい。ゼオライトやくん炭を足す場合も、全体の一部として少量から始める。
なお、休眠期の水やりと断水の判断は、配合とは別の問題だ。冬の水の考え方は塊根植物の冬越しにまとめてあるので、本記事では生育期の乾き方だけを扱う。
市販用土の選び分け — 袋の表示で見るところ
市販の用土は、「塊根植物用」「サボテン・多肉植物用」など用途の表示が違っても、中身の構成は製品ごとに異なる。商品名で選ぶより、袋の表示を次の順で見る方が確実だ。
| 見る項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 原材料 | 赤玉土・軽石・日向土などの無機質が中心か。腐葉土・ピートモス・ヤシガラなどの有機質がどれだけ入っているか |
| 粒の大きさ | 小粒中心か。粉が多くないか。袋の底に微塵がたまっていないか |
| 肥料 | 元肥入りかどうか。入っている場合は、追加の肥料を控える判断材料になる |
| 容量と重さ | L表記か、kg表記もあるか |
| 用途表示 | 塊根植物、サボテン・多肉植物など、対象の植物が書かれているか |
有機質が多めの製品を室内で使うなら、乾きにくさとコバエの出やすさを考え、軽石や日向土を足して排水寄りに寄せる方法がある。

用土はかさばって重いので、通販では本体価格だけでなく、送料込みの総額で比べたい。容量はL(リットル)で書かれていることが多いが、同じLでも素材によって重さが違う。kg表記があれば送料の見当がつけやすく、配送料が重さで変わる店では特に確認しておきたい。
微塵抜きと植え替えの手順
植え替えの時期
夏型の塊根植物の植え替えは、CAUDEX BASEで「最低気温が15℃前後になるころから、4〜6月が目安」とされ、真夏や秋冬は避けるべき時期とされている(出典: 塊根植物の春の管理、CAUDEX BASE)。冬型は生育期が逆になるため、同じ時期にはならない。
パキポディウムに絞った植え替えの時期(出典ごとに3月から10月まで割れている)と、植え替え後の水やりはパキポディウムの植え替えにまとめた。
手順
-
STEP
素材をふるう
乾いた状態の用土を、園芸用のふるいにかけて粉(微塵)を落とす。CAUDEX BASEは、配合の前にふるいにかけて粉状の成分を除くとしている。
-
STEP
配合する
ふるった素材を、決めた比率で容器の中でよく混ぜる。比率は容量で量ると再現しやすい。
-
STEP
株を鉢から抜く
古い土を落とし、根の状態を見る。黒く変色した根や、やわらかく傷んだ根がないかを確かめる。
-
STEP
植え付ける
鉢底に粒の大きい軽石などを敷き、用土を入れて株を据える。すき間は棒で軽くつついて埋める。
-
STEP
すぐには水をやらない
CAUDEX BASE(春の管理)は、植え替え後1週間程度は水やりを控え、明るい日陰に置いて様子を見るとしている。新芽が動き始めたら通常の管理に戻す。
ふるいの目の考え方

ふるいは、目の大きさが違う網を交換できるタイプが使いやすい。CAUDEX BASEは小粒の目安を2〜5mmとしているので、小粒を使うなら、それより細かい粉を落とせる目を選ぶ。素材の袋を開けた時点で粉が混じっていることは珍しくないので、新品の用土でもふるう前提で考えておくとよい。
よくある失敗
- 微塵を抜かずに使う: 袋から出してそのまま植えると、粉が水やりのたびに下へ流れ、すき間を埋める。崩れて粉末になった土は通気性や排水性を悪くする、という前述の解説どおりの状態になる。
- 草花用の培養土をそのまま使う: 腐葉土などの有機質が多い培養土は、塊根植物には乾きにくいことがある。使うなら、原材料を見たうえで軽石や日向土を足す。
- 室内に屋外向けの配合を持ち込む: 屋外でちょうど乾いていた配合が、室内では乾くまでに日数がかかることがある。置き場所を変えたら、乾き方を数え直す。
- 何年も同じ土のまま: 硬質の赤玉土でも、年月がたてば粒は崩れていく。鉢から水が抜けるのが遅くなってきたら、植え替えを検討する。
- 配合を一度に大きく変える: 素材を複数同時に入れ替えると、乾き方が変わった原因が分からなくなる。1回に動かすのは1種類にする。
FAQ
Q. 鉢底石は必要か。
鉢の底に粒の大きい素材を敷く方法は広く使われている。農業環境技術研究所の解説にも、赤玉土の大粒は鉢底に敷くゴロ土として使う、とある。必須かどうかは鉢の深さや排水穴の大きさにもよるが、排水穴を細かい粒でふさがないための層と考えると判断しやすい。
Q. 使った土は再利用できるか。
崩れた粒は通気性を落とすので、そのまま使い回すのは避けたい。ふるって粒の形が残っているものだけを使う方法もあるが、病気の出た株の土は再利用しない方が安全だ。新しい用土と比べて手間と見合うかで決めてよい。
Q. 市販の「塊根植物の土」にさらに何か混ぜるべきか。
まず、そのまま微塵を抜いて使い、乾き方を見る。乾きが遅ければ軽石や日向土を、早すぎれば赤玉土を少し足す。最初から複数の素材を足すと、元の用土の性質が分からなくなる。
Q. パミスと軽石は違うものか。
パミスは英語で軽石を意味する言葉で、コメリの用土一覧でも、軽石・日向土と同じ行で扱われている。製品によって産地や粒の硬さ、大きさは異なるので、名前より粒の大きさと表示で選ぶ。
まとめ
用土配合は、次の順で決まる。
- 最初は市販の塊根・多肉向けの土を、微塵を抜いて使う。自分で配合するなら、軽石・日向土を排水の柱、硬質赤玉土を保水の調整役に置く
- 置き場所と水やり頻度で、標準(A)・排水寄り(B)・やや保水寄り(C)のどれから始めるか決める
- 乾くまでの日数を数え、素材を1種類ずつ動かす
- ゼオライトやくん炭は少量を足す素材として使い、骨格にはしない
- 植え替えは生育期のはじめに行い、直後は水を控える
素材の性質は資料ごとに評価の幅があり、比率に正解はない。ここで挙げた配合は出発点として使い、手元の鉢と置き場所で乾き方を確かめながら調整していくのが確実だ。






